「愁ちゃん♪やーっとお店出てくれたのね!あ、ドンペリよろしくー!」


「ありがとうございます裕子さん」


「んもー!待ってたんだから!」


「体調が悪くて…本当に申し訳ありません」





愁はどんどん売り上げを伸ばした。


驚くほどに、店で一番高いものを売り飛ばす。

俺は客を相手しながら愁のことを見ていた。



すると俺がついていた客が気づいたらしく、こう言ってきた。

「ちょっと直人君。今は私だけ見てよ」


「…今俺の目の前にはお前しかいねぇよ」



ぐいっと近くにいた客を引き寄せる。

そういえばこいつ名前なんだっけ…。




一日目、二日目と着実に店の赤字はなくなっていく。

…面白くない。




そしてとうとう三日目。



「いらっしゃいませ。誰をご指名ですか?」


遠くで聞こえるいつもの接客。

そして…。



「ドロボー…じゃなくって直人さんって大丈夫?」


間違いなく、それは花梨の声だった。