【泥田直人side】


花梨の闇は予想以上に深かった。

震える花梨の体を抱きしめる以外俺にできることなんてなかった。




情けない。

何をしてやれるわけでもないのに俺は花梨の闇を知ったら…なんて考えていた。


「…話すつもりなんてなかったの。あたしどうしちゃったんだろうね」


泣きながらそう呟く花梨。

俺は何も言えなかった。



「…せっかくの日が台無しね。今日は帰ってくれる?」


「いや…俺は」


「帰って」


「花梨…!」


「…まだあるのよ。あたしには汚いところが」


「まだ?」


「これで終わりじゃないの。あたしがあたしを殺しただけじゃ留まらなかったの」


「…それ以上の闇があるのか?」


「聞きたいの?本当に何も言えなくなるわよ」



俺は花梨のすべてを受け入れる。


それはまだ生半可な気持ちだったのかもしれない。




「あたしは借金のおかげで、色んな男に抱かれたのよ」



花梨は自分の両手を広げ、ぎゅっと固く握りしめた。

爪で自分の皮膚に食い込むまで。



「おいやめろ!」


俺は慌てて両手を広げさせた。

花梨の目からは再び涙がこぼれ始めた。