外に出て思い切り汚い空気を肺に吸い込む。
秋だからだろうか。
少しだけ冷たい空気だ。
やっぱり地元の空気が美味しかったと今になって実感できる。
この大都会は全てが汚い。
私が唯一綺麗だと思っているのは清香ママだけ。
信用してるのも、信頼しているのもただ一人。
あたしも自分を偽ってお店に来る人を騙している。
もちろん法的に騙してるってわけじゃなくて…。
男性から見てお金を貢ぎたくなるような自分になっているだけ。
愛は人を裏切るけれど、お金は人を裏切らない。
「君、可愛いね。うちで働いてみない?」
「あんた…誰に声かけてんの?」
ここであたしを知らない人なんてまだいるんだ。
だいたいそういう奴って新入りとかなんだよね。
「間に合ってるんだけど」
「えー?そうなの?でもすっごくスタイルもいいし、可愛いし!うちで働いたら相当儲けられると思うよ!」
「…どっからどう見てもあんたの店は法的にアウトよ」
あたしたちの周りがざわざわしだした。
そりゃあそうだよね。
あたし結構顔知られてるもん。
「うわぁ…アイツ新人か?夜の蝶に声かけとかありえねぇ」
「あの店潰れるね。カワイソー」
店の前が騒がしくなったのに気付いたのか、店長らしき人がその店から出てきた。
そしてあたしの顔を確認すると急に深く頭を下げた。