「すべてが終わったね…」

微笑むあいつに、あたしは頷いた。

「すべてが幸せになる訳ではないけど…皆が生きていける世界になったと思う」

あいつの笑顔に、あたしは見つめることができずに、少し目線を逸らしながら、頷いた。

「そ、それは仕方がないだろう。種族が違う」

「だけどさ」

あいつは、何かを外す仕草をしながら、あたしに近付いて来ると、あたしの左手を掴み、少し上に上げた。

「君と出会ってから、ずっと僕の手にある…指輪」

外したのは、指輪だった。

「この指輪は、君にこそ…相応しいよ。アルテミア」

あいつはやさしく微笑みながら、あたしの左手の薬指に指輪をはめた。

「愛してるよ。アルテミア。例え…君が魔王で、僕が勇者だとしても」

「あ、赤星」

自分でも、顔が赤くなっていることがわかった。

「ティアナさんとライさんのように…立場が違っても、愛し合えるはずだよ」

「赤星…」

幸せから震えるあたしを、赤星は抱き締めた。





なのに…。

今のあたしは、冷たい玉座で独り…座っている。

「アルテミア様…」

配下であるサラとギラに伝えた。

「人間を終わらそう」









「ふざけるな」

見た目…小学生に見える阿藤美亜は、苛立ちを露にした。

路地のゴミ箱を足で蹴ると、美亜は歩き出した。

「赤星浩一は死んだ」

「魔王…アルテミアに殺された」

人々の噂話を聞きながら、美亜は歩いた。

そして、足を止めたのは…いかがわしい店の前だった。


「わかってます?」

テーブルの向こうで、革張りのソファーに座る支配人が溜め息混じりに言った。

「ここは、気持ちを売る店ですよ」

支配人は、前に座る美亜の左手を見た。