「おはよう。おねえちゃん」


「まったく、れんはもうすこしはやおきしなさいよっ」


「んん~、ごめんなさい」



私が五歳の時でも両親はしよっちゅう家を開けていた。


「ねえねえ、おねえちゃん」


「ん?れん、なあに?」



「ぱぱとまま、きょうはかえってきてくれるかな?」



「………」


「ぱぱとまま、もしかしてもうかえってこないのかな…。」


「かえってくる!かえってくるよ!だからそれまではおねえちゃんといっしょにいいこにしてよう?…しんぱいしないで。おねえちゃんがれんをまもるから」


自信なんてないくせに、自信満々にそう言ったのを覚えている。


本当、今思い出すとただの恥だ。

蓮がこれを覚えていないことは恵まれたと思う。


「…うん!ありがとう。おねえちゃん」

その頃の蓮は本当に純粋で可愛くて。

涙目で私にそう言ってきたのは今でも鮮明に思い出せる。


でも


「ただいま。」


「蓮!昨夜はどこにいたの?」


中学二年くらいから、蓮はたまに朝帰りするようになった。