「私は事務所に所属していません。Ayanaと申します。よろしくお願いします」
 

パチ パチ パチ…


「全員終わったかな?では解散!」


その時ふと、三条と目があった気がした。
それは気のせいではないようで、三条がこちらへやってきた。


「こんにちは、Ayanaさん。あなたが一ノ瀬家の長女だということは本当ですか?」


私は一瞬驚いたが、私が一ノ瀬家だということは有名なのですぐに微笑み返した。


「えぇ、本当です。」


すると三条は、効果音が聞こえてきそうなほど顔が明るくなった。


「ファンとしても、三条家の長男としても、前から一度お会いしてみたかったんです!!
Ayanaさんは、14歳ですよね?私はあなたの二つ上なんです。私より下なのに、有名なんてすごいです!」


私は、十六歳なのに純粋な目をした彼に見つめられて少し照れながらいった、


「ありがとうございます。」


照れを隠すように下を向いていた私ところにスタッフの声がかかった。


「撮影はじめまーす。」


「三条さん行きましょう。」


「はいっ、わかりました。」


この時、私は彼の誰にでも紳士的なその優しそうな声と瞳に惹かれていたことを、心のどこかで感じていた。