荷造りが終わって、私は嫌でもこの重い空気に立ち向かわなければならなくなった。


気持ちを分かりやすくたとえると、
クリアレベルぎりぎりでラスボスに挑むかんじ…


そうこう考えていると悠斗が口を開いた。


「三条、テメェのせいで彰まであの狼の群れに飛び込むことになったじゃねぇか。」


「ちょっと待て、それを言うならあいつらをここに連れてきたお前にも責任がある。」


2人は、そう言いながらこの部屋の住人である私を差し置いて言い争いを始めた。


今までの言い合いは2人とも鼓膜が破れるほどの大声でやっていたのに、この部屋では一定の音量でまるで大根役者のように言い合いを進めていくので、それが逆に私を追い込む原因になっている。


私はこの空気に耐えかねて、8割がた呆れ気味の声で2人の言い合いに割って入った。


「あのさ、私が壬生浪士組に入ろうと思ったのは私自身の意志だし、いくら男女の差があるからって私は鬼。だから自分の身くらい自分で守れるよ。」


「でも……」


悠斗が腑に落ちない、といった表情で私を見た。


「2人とも心配してくれたんでしょ?
ありがとう…」


2人の気持ちにうれしく思いながら微笑んでそういった。


そうすると…


「俺が!!
俺が彰の意志を踏みにじったんじゃないのか…?」


悔しさと少しの怒りに震えた様子の翔がそう叫んだ、それらを抑えるそうに言葉を続ける翔に場違いながらもうれしさを感じた。


「それに…
あんな奴にキスをされて…
ごめん、ごめんな…」


「もういいよ………」


そんな翔の様子に私は、色んな気持ちが混ざり合った複雑な表情で微笑むしかなかった。


「…………」


そんな私たちの様子を、何とも言えない表情で悠斗が見ていた。