「また翔さんって呼んでくれないのか?」


彼奴は、あの時みたいなニヤニヤ人を馬鹿にしたような顔じゃなく、
今にも消えてしまいそうな瞳で私に言った。


「あんな、あんなことして許されると思ってんの?
私は、私はっ……許さないんだから。」


私は怒りや憎しみよりも、
彼奴の今にも消えてしまいそうな、切なそうな顔を見て
胸が『キュッ』と締め付けられた。


「私、私おかしいの…
本当なら誰よりもあんたを憎むはずなのに、
あんたが無事だって思ったら、なんか…
なんか安心してきちゃった。」


そう言った私に彼奴は近づいてきて、
躊躇いながらもそっと私を抱きしめた。


「ごめんな、彰。
彰にこんな顔させて…
ごめんな、ごめんな彰。」

彼奴はそう言って、
声を殺して泣いている私の頭を撫でてくれた。