私は、何かに引き寄せられるようにして目を覚まし、
寝ていた布団を抜け出して店の中庭に行った。


サァァ…


そこにあったのは、
桜の花びらが月明かりに照らされながら散っている、何とも幻想的な風景だった。


「きれい…」


その景色に魅了され、私は無意識のうちにそうはいた。


カサッ

パキッ…


「誰っ!!」


私がその景色に魅了されていると、木の枝を踏む音が聞こえた。


「俺だよ、彰。」


そう、そこに立っていたのは私を絶望へ突き落した、張本人だった。


「……!!何であんたがここにいるのよ。」


私は今まで本人に言ってやりたいことが沢山あった。
理性なんて忘れて、私の思いをぶつけてやりたかった。
なのに、それができない自分がいた。


「何で!……何で、あんたがそんな切ない顔して私を見てるのよ。」


「ごめんな、ごめんな彰。」


だってそこにいた彼奴は、今にも消え入りそうな瞳で私を見ていたから。