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「皆さーん、昼餉できましたよー!」


やっとの思いで隊士全員分の昼餉を作り終えた私は、道場で稽古をしている隊士の皆さんの声をかけるために道場へと来ていた。


柔術の稽古で使っていた同情とは少し違うけど、久しぶりにこの空気を感じたのは私が現代にいたとから実に約一年ぶりくらいだ。


もう悠斗や翔以外の人と試合をすることはないだろうと思うと少し寂しさがこみあげてくる。


私はここで生活していく以上そんな甘いことは言っていられない。そう思いを振り切って、昼餉の時間だから稽古の時間は終了と声をかけるため声を張り上げるべく、息を思いっきり吸おうとしたその時。


「彰、危ないっ!!」


「………うわっ!!」


バキッ……!


ドス ドスッ……!


その三つの激しい音が道場内に響き渡った。


数十秒の思い静粛。今、この場に何人ものの人間がいるとは思えないほどの静粛を破ったのは、誰とも知れない平隊士と思われる男の一言だった。


「す、げぇ………」


私も何が何だか分からない中、何故かジンジンと痛む自分の右手につくられた拳に目を向けた。


そこで漸く、何故だかわからないが柔術の姿勢で構えられている己の身体に気が付いたのだった。


何が起こったか当たりを確認したところ、床と天井に突き刺さっている真っ二つに割れた木刀らしきもの。


『あぁ、なるほどね。』


何故だか理由は分からないけど、おそらく私に向かって木刀がとんできてそれを私が反射的に柔術の構えをして折ったんだろう。だからさっきから拳がジンジン痛んだんだ。


木刀でこんなに痛いってことは、瓦割わりどんだけ痛いんだろうね、想像もつかないや。


「だ、大丈夫か?」


「一応ね。
ところで、悠斗。何でこんなのが飛んできたの?」


「あぁ、それは………」


何故か気まずそうに口を紡ぐ悠斗。悠斗と長い付き合いの私はこうなったらなかなか口を開かないとわかっているので、私はこの現況を探るべくあたりを見回した。