一声かけて薄暗い店の中に入った私。そうしたら、少し先に人影が現れた。


「あの、お酒を三瓶ください。」


「ちょっと待ってて。」


そこから現れたのは、私が予想していたおじいちゃんの姿とは程遠い、中性的な青年だった。


「はい、お酒三瓶ね。」


「あ、りがとうございます……」


「にしても………
珍しいね。君みたいな子がこんなところに来るなんて。」


私はてっきり、そのまま返されると思ったので、急に振られた会話に戸惑いながらよく意味の分からない質問の意味を尋ねてみた。


「えっ………?
だって、ここは酒屋ですよね?」


「いや、そういう。意味じゃなくてね。
ここの酒屋はね、普段からお客が全然こないんだ。それは、ここが俗にいう裏の世界ってやつだからなんだよ。」


裏の、世界………?


「あはは!
よくわからないって顔だね。
…………それにしても。君、美人だね。」


すると、今まで三日月のように弧を描いて微笑んでいた男の大きい目が開かれた。まるで、私を見定めるように。


「ありがとうございます………」


「あはは!
普通、そこは謙遜するところじゃないかな?」


「誰でも、あなたみたいな怪しい人に謙遜なんてしませんよ。それと、裏の世界ってなんですか?」


「君、おもしろいね。
名前を教えてくれるかな?」


「彰です。
それより裏の世界って………?」


会話がかみ合っていないことにイライラしている私。


でも、名前を名乗るのは礼儀なので一応名前は名乗ります。苗字はい言いたくない、なんとなくね。