「えーと、え?」

「麗華、ここ」


隣から友人が小声で教科書を指している。


「ウェン・・・ウィー、ビザ?」

「宮内さん、結構。
 黒沼君、続きを読んで」


残念ながら、彼女は知能には恵まれなかったようだ。

全科目、この調子だ。

果たして大学に内部進学できるのやら。

未だ会話らしきものをしたことがない仲で、余計なお世話だが。

この高等部を選んだきっかけにはなったが、彼女に対して付き合いたいとか、そういう気持ちは無かった。

興味深く観察しているぐらいが丁度いい。

あまり他人に深入りしたくなかったし、深入りして欲しくない。

怜士は教室の一番後ろから、附眼するようにクラスメートの後姿を眺めた。