手だけで誰だかわかる。
手渡されて、見上げると、逃げんなよ、と無言で圧力がかかってきた。
「ありがと」
麗華はぼそりと呟くと、週番室を後にした。
「宮内ー。
おまえ髪切って、マジで今度のサッカー部の試合出ない?」
「いや、マジ出ないでしょう。
じゃ、私こっちだから」
田中に高等部門で片手をあげると、そそくさと違う道からコーヒーショップに向う。
なんだって今泉は怒ってたんだ。
相当、機嫌が悪そうだ。
なんだか気重。
先に席について、クッキーをかじっていると、遅れて怜士がやってきた。
「おまたせ」
顔をうかがうと、いつもどおりだ。
くっきりとした二重なのに、涼やかな目元。
眼差しだけで空気に清涼感が漂うのだから、貴重だ。
麗華はしばし観賞した。
「はい」
一緒に注文しておいたカフェラテのカップを差し出す。
「サンキュ」
声の調子も普通だ。
機嫌はなおっているらしい。
ようやく麗華はほっとして、筆記具をバッグからとりだした。

