「勝手口から出るよ」 「わかったわ」 佐和はさらさらと音を立てて、玄関から靴をとってきてくれた。 「こんなにすぐ帰ってしまうなんて」 少し恨みめいて、そっと怜士の腕に触れる。 「また、すぐよ」 切れ長な目が切なげに見上げてくる。 怜士はくすりと笑って、わざとキスをした。 これで、もう一度、紅を直さなければならないだろう。 勝手口の小さな門をくぐると、ちょうど車のドアが閉まる音がした。 何気なく、そちらをみる。 正門に立っている人物もこちらを向いた。