佐和は40代半ばの未亡人だ。
かなり年上の資産家と結婚し、数年前に亡くした。
暇と体をもてあまし、趣味としてお茶を教え、男と関係を持つ。
少なくとも自分の他に、後2人ぐらいは男がいそうだ。
女を教えてくれて、この年頃のエネルギーを解消してくれる相手としては、申し分なかった。
湯上りに台所へ行くと、盆にコップを載せ、テーブルに置かれた。
佐和は隙も無く着物姿に戻り、情事の跡形などおよそ感じない。
ある種、尊敬してしまう。
怜士は立ったまま、一気に水を飲み干した。
「じゃあ」
「そう。
いっちゃうのね」
この寂しげな声音は上手い。
何人の男が騙されたんだろう。

