自宅への帰宅ルートではなく、通いなれた寄り道ルートをたどり、いつものようにインターホンを押した。
互いに何も言わず、カギの外れる音がしたのに、門の引き戸を開けた。
玄関までの間は、ちょっとした坪庭のような風情になっている。
打ち水された石畳を通り、玄関のドアを引く。
家の女主がたたきの上に立っていた。
「こんばんは」
怜士の挨拶に、紅のひかれた綺麗なくちびるがおかしそうにほころぶ。
「ただいま、って言ってくれたらいいのに」
いつもに言葉に、いつもどおり薄く笑って無視をする。
靴を脱いでたたきにあがった怜士の腰に片手を置き、もう片手で前髪に触った。
「今日は遅かったのね」
「今週、週番にあたっているから」
「週番?」
「放課後の校舎見回り」
「そうなの」
笑いで少し目を細めて、怜士を見つめてくる。

