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怜士は帰り際、校舎を出ると、鞄から取り出した冊子で、麗華の頭をぱかんと叩いた。
「なに?」
「さっき言っていた、渡す物」
「毎日のドリル小学校1年生?」
「明日までに仕上げてこい」
「げぇ~っていうか。
小学校1年生って」
「そこからやらないとダメ」
「ちょっ、今泉」
「今日は用事あるから、じゃあな」
「こっちだって、予定があるんだからな~」
背中に遠慮深く、小さい声で文句の叫びを投げつけられるに、口元を緩めた。
勉強を他人に教えるなんて、はっきり言って面倒だ。
面倒だが、宮内となら、そういう時間を持ってもいいかと思ってしまう。
自分に後どのくらい平凡な時間が残されているのか、わからないだけに。

