「うちの場合は、絶対嫌だって言ったら、結婚しなくて済むだろうし、一生独身でも許されるとは思うんだ。
でもヒロ兄が結婚しなかったら、私がするしかないし、ね」
「それ相応の責任を感じて育っているんだろうから、するんじゃないの?
義務として」
「どうかな。
ちょっと難しい状況に、はまってるし」
怜士に答えるというよりも、呟きのようだ。
人が少なくなった校舎の中に二人の足音が響く。
静けさに誘われるように麗華は口にした。
「なりたいものが無いわけじゃないんだ」
「ふうん。
なに?」
「小学校の先生。
って、そんなに驚く顔をしなくてもいいじゃない!」

