「なに?」
「テンパってるみたいだから」
言われてくちびるを噛んでいる。
「大丈夫だし」
低い呟きに、怜士は口元をひきしめた。
それは、自分に言い聞かせているようだった。
お互い好きで、求めあったのではない。
カテキョの代償。
普通は、好きでどうしようもない相手だから、踏み切るんだろう。
高校生なら、そういうのを夢みている。
「宮内さ」
その先が途切れる。
黒目がちの瞳を見下ろした。
跳ね返すように見つめ返される。
「なに?」
「今後は負けん気を利用されて、男と寝ないように」
「なっ」
睨んで何か言い返そうとしたが、そのままくちびるを引き結んだ。

