「匂いを消すためにシャワー浴びた方がいいけど、ボディーソープは使うなよ。
 香りがついて、ばれる」

「その浮気を誤魔化すテクニック満載の情報、無用だから」


バスルームから大声で怒鳴り返される。

怜士はくすくすと笑いながら自分もベッドから出た。

麗華が出てくると入れ替わりで急いで浴び、身支度を整えた。

廊下を歩く麗華は何気ない様子を装っているが、歩みは遅いし、ぎこちない。

怜士は腰に腕を回して、支えるようにした。


「無理しない」


笑いを含んで耳元に囁かれ、ぎっと睨みあげる。


「普通、初めての相手に手加減しない?
 全く、遠慮なしに喰ったでしょ」

「ああ、わかった?」

「わかったじゃない」

「なんか、あなたには遠慮しなくてもよさそうで」

「どうしてよ。
 っというか、自分はちゃっかりボディーソープ使ってるし」

「だって、ばれても困ることないから」


怜士の返答にぐっと歯を噛みしめている。

微妙に瞳も潤んでいる。

男と寝たという事実と痛みに、精神的に不安定らしく、どうでもいいことに食って掛かってくる。

怜士は立ち止まると、空いている片手でぽんぽんと頭を叩いた。