「ずいぶんな挨拶だね」

「いや、だって」

「何をあせってるの」

「あせるでしょう!
 普通」

「そう?
 気持ちよく寝てたけど、門限、大丈夫?」

「門限?
 今、何時?」

「もうそろそろ9時」


あわててベッドから降りようとして、怜士の腕から抜け出せないのに身をよじった。


「ちょっと」

「ああ、悪い」


力を抜いて、腕をほどく。

麗華は何の躊躇もなく滑り出て行った。

腕の中に、代わりにつめたい空気が入り込む。

降り立って、痛みにバランスを少し崩し、顔をしかめている。

それに奇妙な満足感を覚えた。