「車、返したの?
電車?」
「たぶん、どっかで待ってる。
電車は乗っちゃいけないことになってるし」
「なんで?」
ちょっと驚いて、隣を見た。
麗華は背が高い。
170はあるだろう。
だから多くの女性と話すときのように、目線はそんなに下げない。
同級生の男子と話しているぐらい。
それが理由かわからないが、対等に会話をしている気分になる。
「初等部の高学年頃から、電車に乗ると、触られるし、家までつけられるし」
怜士はため息を思わずついた。
「同情とおりこして、憐れみたくなる」
「それ、無用だから」
「車まで送る」
「いいよ。
近くにいるんじゃない」
「今までのを聞いて、送らなかったら、人間性疑われそうだから」
「十分、疑ってるけど。
でもサンキュー。
こっちみたい」
怜士と会話しながら、スマホを耳に充てていた麗華は指を指した。

