「かわいいキスだったわね」

おかしそうな口調に不敵な笑いを口元で作った。


「相手に合わせただけだ」

「あら、そう」


アイーシャに対しては、思いやりの無い、ただ興奮を引き出し、気持ちよくなりたいためだけのキス。

今のを、アイーシャがどう意味をとろうと知ったことじゃない。

都合よくとったなら、それはそれでいい。

腕を組んで立ち去っていくのを、麗華がどう思うかの方が気になる。

あいつは。

いきなり男にキスされたと言うのに、あせってもいなかったし、動揺もしていなかった。

少し驚いていたぐらい。

そうだ。

歴代のカテキョたちに、いきなりキスはされていたんだった。

全く、自分は何をしているんだろう。

水井への巻き返しを狙ったのなら、あんなお子様のはないだろう。

いや、だが、ただでさえガッツリ系だと言われているのだから、それはそれで違う誤解を生んだか。

行き先のホテルの光を背に男が出て来たのに気づく。