怜士はバッグを取り上げると、自分の隣の空いている席に置いた。


「ありがと」

「いいえ」


そのまま怜士の視線はノートに落ちた。

麗華はどぎまぎしたまま教科書を手に取った。

掴まれた手の荒々しさと、力の強さ。

そして一瞬見せた、男の顔。

獲物を狩る顔。

えーと、欲求不満?

そういえばお香の香りがこの頃しないかも。

わかるぐらい近づいていないけど。

点火祭の時、ぐらいだし。

いやいや、そこじゃない。


「今泉、佐和先生とは?」

「佐和?」


呼び捨ての上、微妙に遠慮の無い声音。

そこに二人の関係の親密さが伺える。

一緒にいる時間はそんなに違わないはずのに、男女の関係じゃないと、こんなに距離が違うのか。