「また、そうやってバカにして」

「してない、ほめてるほめてる」

「まったく、聞こえないから。
 でも、ありがと。
 なんとなくシンデレラの靴みたいで、かわいいね」


リボンをかけ直すと、バッグにしまっている。

バッグへ俯き加減の顔を見る分には、嬉しそうだ。

まあ、食べ物だったら何でも喜びそうだが。

くれる相手が誰でも喜びそうな点がいただけない。

チョコレートでかたどったハイヒール。

確かにもう片方はガラスの靴だな、と思う。

有形ではないけれど。

履かせる相手がどこにいるかわかっているのに、それを胸の中に抱いたまま、さまよう。

やがて麗華は他の誰かと恋に落ち、結婚するだろう。

考えるとじりじりと身が焦げる。

バッグを空いている席に置こうとする麗華の手を取った。

驚いて麗華が目を丸くする。