「頭のいい人は、当たり前の事だから、褒められても嬉しくも無いんだろうな」
腕を組んで、観察するように眺められた。
「遺伝子操作でもされてるかもね」
ジョークだと思ったらしい、麗華はからからと愉快そうに笑った。
冗談の積りじゃなかった怜士は、何も言わなかった。
言えまい。
遺伝子操作されていた場合、どうツケが現れるのだろうか。
ガンか。
若年痴呆症か。
難病か。
わからない。
これも、やがては去る理由だ。
今まで何かを欲しいと思ったことなど無いのに。
黒目がちの大きな目を細め、楽しそうに笑う姿。
すこんと底抜けに明るくて、側にいれば何でも上手く回って行きそうに感じさせてくれる。
あの地位に就けば。
古典の教科書のページをめくる手が止まっていた。

