君塚鞠江。

今日初めて聞いた名前。

だが、これは手がかりになるかもしれない。

自分の遺伝上の母への。

写真には、静かに微笑を浮かべている女性が写っていた。

麗華の母のように、屈託ない、無邪気な笑いではない。

たぶん、意思がはっきりしていて、頑固な一面がありそう。

麗華の母のように、単純にお嬢様として育ってはいない感じ。

自分の顔とは全く似ていない。

当然だ。

この顔はあの男にそっくりなのだから。

怜士は口の端に皮肉の笑いを浮かべる。

そしてそっくりのあの男は、遺伝上の母をどうしたのだろうか。

自分だけでなく、他の息子たちの、も。