校内を見まわりながら食べようと思っていたのだが、怜士はカフェテリア内の長テーブルに歩いていく。
「ん」
一つの椅子を引いて、そのまま行ってしまった。
たぶん座れという意味だろう。
麗華は腰をおろすと、ラップを破ってかじりついた。
教室でも、しばしば怜士のこういうスマートな様子を見かけて、外国人の身内がいるかと思ったのだ。
この年頃で、そんな振る舞いが出来るのを、後は自分の兄ぐらいしか知らない。
「がっつくなよ」
目の前にカップが置かれた。
関節が少し骨ばっている、長い指。
ちょっとドキリとした。
怜士が当たり前のように向い側に座るのに、落ち着かなくなり、食べる速度が遅くなる。
麗華の様子には気づかず、組んだ足がテーブルにぶつかるのに、体を少し横にした。
それで圧迫感が軽減され、麗華は体に入っていた力を緩めた。
こちらに見せている横顔をなんとなく見つめる。

