一方。
麗華が去って静寂が戻ると、静かに座っていた彼、尚也は本を閉じた。
「一枝。
煙草と酒」
一枝はくつくつと笑い出した。
「いつ言うのかなーと思っていたけど。
なんで麗華に遠慮したの?」
そしてわざと煙草をくわえる。
尚也は立ち上がると、煙草を取り上げ、ロックのグラスに投げ入れ、グラスを奪った。
「顔を立てたの。
可愛がっている姪の前で、年下の男に指図されている姿を見られるのは嫌だろうと思って」
嫌味がまんさいだ。
尚也はいつも年下と言われるのを嫌がっている。
1学年しか違わないし、実質、生まれは半年の差だ、というのが言い分だ。
一枝は片眉を高々と上げた。
そして何も言わずに書類に視線を戻す。
尚也はその長いまつげを見つめ、ため息を一つついた。
麗華と同じように。

