「あのまま勉強、してたの?」
「いやいやいや」
見えないのに、ぶんぶんと手を振る。
「じゃ、こんな時間まで何してんの」
また声が冷えてくる。
「いや叔母の所に寄っただけって」
なぜか必死に釈明する羽目になる。
「ふうん。
そう」
「本当だって」
「わかったって」
全然、信用していない声じゃないか。
というか、なぜこんな会話?
「実験教室、調べておいたから。
明日、学校で渡す」
「あ、ありがとう。
助かります」
「いいえ、どういたしまして。
じゃあ、ちゃんとまっすぐ家に帰るように」
口調に嫌味を感じながら電話を切ると、ため息をついて車に乗り込んだ。

