昼時でざわついているから、会話は聞こえなかった。

突如、美和が笑って、麗華のくちびるに指を滑らせた。

口元についていた米粒をとって、そのまま自分の口に運ぶ。

麗華と一緒にランチをしていた友人が、ふざけて黄色い声をあげた。


「宮内は欲求不満にならなさそうだな。
 なんせ親公認の男がいる」


なぜこんなに自分の声が嫌味っぽいのか。


「はい?
 なに、また美和のこと?」


なぜ水井は名前を呼び捨てなんだ。


「別に美和と体関係ありませんけど?」

「へえ。
 そうか、違うところにいたか」


麗華は眉根をよせた。


「どうしたの、今泉?
 変だよ」


怜士は麗華に視線を移した。


「ああ、悪かった」


全然、悪かったような口調で言わず、また答案に視線を戻す。

違う所に居ることに否定なしか。

あれほど男に嫌な事をされて、男性不審にならないのは、絶対の信頼がある男がいるからなんだな、とかつて振ったことがあった。

気配を感じなかったが、本当にいるのか。

およそ男を知っている体とは思えないが。

というか、やっぱり知らないな。