「小学生相手にやっている実験教室に通え」

「はあ?」

「そこからやり直すしかない。
 すぐ申込みに行け」

「横暴~。
 今泉、なにカリカリしているの」


今日はなんだかイラついているのを感じていた。

ぎろりと睨む。


「していない」

「佐和先生と喧嘩して、欲求不満?」

「女がそういうことを言うな」

「やっぱり、カリカリしているじゃん」

「していない」


ぴしゃりと言い返して、今度は麗華の数学の答案用紙に集中する。

どこが弱くて、やり直しをする必要があるのか。

麗華は肩をすくめて、アイスコーヒーのストローをくわえた。

怜士の視線が意図せずにとまる。

マニキュアは塗られていないが、綺麗な桜色の爪。

指は細くて長い。

ストローをくわえているくちびるは透明なグロスをつけているらしく、つやがあった。

親公認だが、婚約者ではないと言う美和が、麗華のところに現れたのは、昼休みのことだった。