「ちょっと、龍夢!離しなさいよ!あたしは挨拶なんかしないんだから!」


「そう言われても、連れてこいって命令だからね〜」




なんて声がだんだんこの部屋に近付いてくる。




そして現れたのは白い布に巻きつかれ、宙に浮く黒髪に水色の瞳をした少女。




少女はグルグル回って床に落ちる。
そして白い布は少女の隣に降り立ち、人の姿になった。





肩につくくらいの焦げ茶の髪を緩く一つに縛り、緑の目をしている男性は恐らくさっきの白い布の妖怪なんだろうか。




「龍夢、ご苦労だったな」


「いえいえ。三篠様のご命令ですから」




ゆるりとした笑みを浮かべ、その男性は私を見た。




「初めまして、姫様。三篠様の第二臣下・龍夢(りゅうむ)と申します。座敷童と…」




龍夢さんはボンッと音をたててまた白い布の姿になって、私の周りをグルグルと回った。




「一反木綿という布の妖怪との混妖です」




一反木綿。
なんとなく聞いたことはあったけど、本物を見ることになるなんて思わなかった。




今度姫様を乗せますよ〜。
なんて龍夢さんは緩い口調で部屋中を飛んでいる。




そんな龍夢さんを見ていると、ジッとこっちを見つめる黒髪の少女と目が合った。




「…………」




でもすぐに逸らされてしまう。
少女は目つきを鋭くして私を睨んでた。