ドクン…




(…っ、なんだ…この感じは…!)




全身に力が湧いてくるような感覚に陥る。
小雛の血を飲むのは深寿と計画してわざと倒れた時以来だが、こんな風に感じることはなかった。




今の妖力の量なら敵を一人で片付けられそうな、そんな風に考えられてしまうほど小雛の血は強大な妖力へと変わっていく。




そして血が止まった頃、小雛は指をゆっくりと三篠の口から抜いた。




ゴチン




「いった!」




小雛が指を抜いてすぐに三篠は小雛の額に頭突きをお見舞いした。
小雛は額を押さえようとしたが、三篠の額がくっついたままなのでさすることが出来ない。




「最初の方に言ったはずだぞ!?むやみに血を与えるなと!
それなのにお前は「だって三篠のことも護りたかったから…!他に方法が思いつかなかったんだから仕方ないでしょ!?」




また三篠は小雛に怒ったが、今度は小雛が反論してきた。




その反論文に、三篠は何も言えなくなってしまった。




「…ったく」




これ以上怒れなくなってしまった三篠は頭を掻きグシャグシャに髪を乱したかと思うと、いきなり小雛に触れるだけの口づけをした。




小雛はいきなりの口づけに、目を見開いて受け止めた。




三篠の唇はほんの数秒で離れた。
小雛は至近距離にある三篠の顔が見られず、目を泳がせた。




三篠はそんな小雛の手を持ち、指に触れた。




「…戦場に行く前から傷をつくるな、全く」


「…あ、傷が……」




小雛は三篠が触れている指を見る。
そこはさっきまで刀で斬った切り傷があったのに、綺麗になくなっていた。




(今のキスで治してくれたんだ…)




小雛は綺麗に元通りになった指を見つめていると、その指を引っ張られアッサリと三篠の胸の中に収まった。




(…三篠……?)




三篠の顔を見ようとしたが力強く抱き締められ、身動きがとれない。




さらに抱き締める腕に力がこもり痛いと言おうとした時、三篠が小雛の耳元で囁いた。




「…必ず生きて帰ってこい。それが胡蝶ノ国に行く条件だ」




三篠らしい言葉に小雛は思わずフッと笑った。
そして頷く代わりに、三篠の広い背中に腕を回し抱き締め返した。