それから賑やかな食事会が始まり、男性である三篠や桔梗さんは毛倡妓の皆さんに引っ張り凧だった。
当然人間の鵺姫である私の方にもたくさん寄ってきて、毛倡妓の皆さんの色気に酔いそうになった。
私と三篠の馴れ初めを聞かれ、三篠は恥ずかしいことを語り始めた。
私は聞いていられずに遊郭を見渡せるベランダのような場所で一人、風を浴びていた。
時刻は夕方になろうとしていた。
あちこちの遊郭が営業を始めていて、いろんな客が歩いている。
「…あ、小雛ちゃん。こんなところにいたんだね」
「……菊葉ちゃん」
食事会ですっかり仲良くなった菊葉ちゃんとは、名前で呼び合うようになった。
菊葉ちゃんは私の分の水を持ってきてくれた。
その水を受け取り、隣に並んで空を見上げる。
「…みんながしつこく迫ってごめんね。
疲れたでしょ?」
菊葉ちゃんは眉をハの字にして微笑んだ。
毛倡妓の皆さんの迫り様には、かなり驚いたけど……
私は首を横に振る。
「…皆さんに歓迎されてるって感じがして、すごく嬉しかったよ」
そう言えば、菊葉ちゃんは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
菊葉ちゃんはここの人達のことを褒めると、心底嬉しそうな表情をする。
きっとこの国がすごく……
「…私、この国のみんなが大好きなの」
考えていたことが、菊葉ちゃんの口から発せられた。
やっぱり菊葉ちゃんはこの国が、ここに住むみんなが大好きなんだね。
「…純妖も混妖も関係なく愛してくれる母様も、混妖として今を精一杯生きてる姉様も、どんな辛い過去があろうと守るもののために戦ってる蜜葉も、明るく前向きに生きてるここのみんなが私は大好きなんだ。
みんながいるから、私はこうして楽しく暮らせてるし、みんながいるから私は笑っていられるの。だから私はみんなのためなら命だって差し出せるんだ。
だってみんなの笑顔が見たいから」
私はずっと勘違いしていた。
菊葉ちゃんと私は年が近くて、自分と同じくらいに幼い子だって。
実際、菊葉ちゃんの方がずっと大人だった。
幼い外見とは裏腹に考えてることは一人前の大人で。
私の方が幼く見える。
この国のみんなのことを考えてる菊葉ちゃん。
すごいな、ほんとすごい。



