狂愛ノ書~紅き鬼と巫女の姫~





毛倡妓の長・琴葉さんは、完璧な笑顔を見せた。
その笑顔にしばらく酔いしれてしまう。




ハッと我に返り、慌てて私も名乗った。




琴葉さんの顔立ちといい笑った顔といい、どことなく瑠璃葉に似ている。




そんな風に考えていると、瑠璃葉が説明を加えてくれた。




「…この琴葉は長でもあり、アタシの母様でもあるんだ」




よく似てるって言われんだよ。




瑠璃葉はそう言ってふっと笑った。
その顔がまさしく琴葉さんそっくりだった。




やがて琴葉さんは優しい表情から、鋭い表情へと変わった。




「…アタシはスパイとして現妖王のところに潜入して、情報を盗み出し三篠達に教えてんだ。
要はアタシら毛倡妓の一族は、三篠達の味方ってことさ」




分かるかい?
琴葉さんは妖艶にウインクをして、私に教えてくれた。




つまり琴葉さんは現妖王の味方のフリをして情報を聞き出して、それを三篠に伝えてるってことだよね。




きっと見つかったら一巻の終わり。
命懸けのことをやってるんだ、琴葉さん達は。




「…それでそのスパイは、一体何の情報を手に入れたんだ?」




話を上手く噛み合わせるようにして、三篠は本題に入った。
琴葉さんは肘置きに肘をつき、頬杖をついた。




「手紙を黒兎に届けようとした時に、たまたま聞いちまったんだ。
黒兎と冷樹が話していることを」


「…黒兎と冷樹、か……」




二人の名前を聞いて三篠は何か考え込むようにして、下を向いた。




「……あの、黒兎と冷樹って……」


「…黒兎は現妖王の名前です。
冷樹というのは、純妖の雪女の長の名です」




三篠と琴葉さんの話の邪魔をしないように、小声で桔梗さんに尋ねた。
桔梗さんも私に耳打ちして教えてくれた。




雪女の長ってことは、もしかして氷雨さんと関係あることかな……?




私の考えは意外にも当たることになった。