「…雛姉のこと…お母さんから聞いた。
……死なないで…たまに帰ってきて」


「…うん。しばらく会えないけど、お母さんやおじいちゃん、大地のことよろしくね」




来海の頭に手を置くと、来海は普段は見せない笑顔を見せた。
それから大地が「るみ姉の世話になんてなんねぇし」と言ったら、来海に頭を叩かれていた。




叩かれた頭を押さえながら涙目で私を見つめてきた。




「…よくわかんないけど……気を付けて行けよ」


「……うん。大地はちゃんと勉強して大きくなるんだよ?」




大地の頭を撫でると「ガキ扱いすんな」と手を振り払われた。
でも大地の頬が赤くなってて、撫でられて嬉しいんだとつい笑ってしまう。




来海はもう中学生だから、お母さんから聞かされたことを理解してるよう。
大地はまだ小学生だから、いまいち分かってない雰囲気を出してる。




まだ分かろうとしなくていいんだよ。
そう思いを込めて、また大地の頭を撫でた。




そして来海と大地のところから、お母さんとその隣にいるおじいちゃんの元に近付いた。




「…じゃあ、行ってきます」




そう言って笑うと、お母さんはニコッと笑い返してくれた。
おじいちゃんは何も言わずにただジッと私を見ているだけだった。




言うことないんだろうなと思い、私はおじいちゃんの横を通り過ぎた。




『…死んだら承知せんからな』
すれ違いざまに言われた言葉に、私は何も言わずにコクリと頷いた。




大きな鏡の前に立つ。
私がこの鏡に触れて、三篠に出会って生き方が変わった。




そして私の新しい生きる道が、この鏡に触れることで始まる。




私は鏡の中へと入った。