「…何故俺が殴られなければいけないんだ」
「あのね、入浴中の女の子を覗くとそうなるの。分かった?」
額にできた桶の丸い跡をさすりながら、三篠は納得のいかない顔をしていた。
だから私は小声で怒りつつも理由を教えてあげた。
何故小声なのかというと、紅葉が私の膝の上で眠っているから。
お風呂から上がってから、紅葉は疲れが溜まっていたのかすぐに寝てしまった。
今日はいろいろと心配させちゃったからな。
私の膝の上で丸くなる紅葉の尻尾を優しく撫でる。
「…紅葉ばかりズルい」
「わ、ちょっと三篠……!?」
「暴れると紅葉が起きてしまうぞ?」
窓の桟に座っていた三篠がいつの間にかベッドの上にいて、私を後ろから抱き締めてきた。
さっきのお風呂のこともあって、なんだか異様にドキドキする。
三篠の腕を振り解こうとするけど、動くと紅葉が起きちゃうから動けない。
離してと言っても三篠は聞いてくれないので、諦めてされるがままに抱き締められることにした。
回される腕を覆う着物の袖からは三篠の匂いがする。
眠る時にいつも嗅いでいた匂いになんだか眠くなりそう。
「……小雛、答えは決めたのか?」
やっぱり、聞きに来たんだね。
私がどっちの道を選ぶのか。
私は首を横に振った。
そして今日、おじいちゃんから聞いたひいお婆ちゃんのことを話した。



