狂愛ノ書~紅き鬼と巫女の姫~





夕飯を食べ終え、私は紅葉と入浴中。




紅葉のフワフワした髪と尻尾を丁寧に洗いながら、そろそろ出そうな結論を前に疑問がいくつか浮かんできた。




「…ねぇ、紅葉?人間として生きることを選んだ鵺姫ってどうなるの?
それと鵺姫のいない妖王ってありなの?」




狂愛ノ書には『妖王は鵺姫を狂愛する存在でなければならず、鵺姫は妖王に狂愛されなければならない』と書かれていた。




でもひいお婆ちゃんは妖王と結ばれなかった。
ということは、その時の妖王に鵺姫はいなかったということ。




そうなると鵺姫と妖王はそれぞれどうなるの、という疑問がふと浮かんできた。




浴槽に浸かり、紅葉は小さいから私が抱えて入る。
紅葉は気持ちよさそうに目を閉じ答えてくれた。




「…人間として生きることを選んだ鵺姫は短命となるとどこかで聞いたことがあります。
健康体だった鵺姫もいきなり不治の病にかかり、死すると。
ですが歴代の鵺姫の中で人間として生きる道を選んだ鵺姫は、小雛様のひいお婆様で初耳です」


「……ということは、ひいお婆ちゃん以外の人間の鵺姫はみんな妖王と生きることを選んだの?」




私の質問に紅葉はコクリと頷いた。




人間として生きると、鵺姫は短命になるんだ。
そんなこと狂愛ノ書には書いてなかったってことは、歴代の鵺姫は経験してなかったってことだよね。



私のひいお婆ちゃんは除いて。




「…そして小雛様のもう一つの質問ですが。
小雛様のひいお婆様のことは分かりませぬが、かつて鵺姫のいない妖王はいたと聞いております。
でもそれは鵺姫が”死んだ”、あるいは”殺された”からであって、完全に鵺姫がいなかったということはなかったようです」


「……なるほど」




紅葉の言い方からすると、鵺姫は必ず妖王の隣に存在していたということが分かる。




妖王に肉を与え、自我を失い愛する妖王に殺されたとしても、妖王は妖怪の力を覚醒できていれば鵺姫がいなくても大丈夫なんだ。




ひいお婆ちゃんは妖王に肉を与えてから、人間として生きたのかな?
いや、そしたらひいお婆ちゃんは人間じゃなくなるはず。