もうため息しか出てこない。
おじいちゃんもこれ以上言うことがないのか、冷めてしまった緑茶を口に運ぶ。
私もモヤモヤする頭をスッキリさせようと、緑茶を飲んだ。
「……『己の生きる道に悩んだのなら、あなたの大切な人のために生きる道を選びなさい。あなたの大切な人もきっと、あなたが隣にいることを望んでいるはずだから。』」
「……お、おじいちゃん…?」
おじいちゃんがいきなり女の人の口調になるから、驚いて言葉が出ない。
でもこの言葉はおじいちゃんの言葉じゃないとすぐに分かった。
「…お袋が言っていた言葉じゃ。『もしお前が生きている内に鵺姫が産まれて、生きる道に悩んだのならこれを言ってやれ』そう言われ、儂はずっと覚えておった」
ひいお婆ちゃんはおじいちゃんにそう言い残していたんだ。
大切な人のために生きる道……
ひいお婆ちゃんは、それで人間として生きる道を選んだの……?
人間界にひいお婆ちゃんの大切な人がいたのかな…
私にとっての大切な人。
お母さん?来海?大地?おじいちゃん?亜子?璃々音?
それともこれからの未来で出会う人?
人間じゃないとしたら………
思い浮かぶのは、風に靡く金色の髪を揺らした彼の後ろ姿。
私は誰を選ぶのが、正解………?
小雛と紅葉が部屋を出ていき、一人取り残された小雛の祖父・茂は部屋の隅にある机の引き出しから一枚の写真を取り出した。
「…ちゃんと言っておいてやったぞ、お袋」
その写真には、小学生であろう茂と、嫌がる茂を笑顔で抱き締める女性がいた。
茂はその女性を見て、眉をハの字にして困ったように笑った。
「…『自分のように後悔しないように…』は言わなかったぞ。小雛はお前と違って、後悔する方を選ばないだろうからな」
茂は写真を入っていた引き出しの中に戻し、緑茶を飲み干した。



