「…妖王と上手くいっていたある時、お袋は母親から一冊の本を渡された。
それからじゃと聞いた、お袋は妖王から離れ人間として生きると言い出したのは」
一冊の本とは、きっと狂愛ノ書のことだ。
狂愛ノ書を読んで人間として生きることを決めたと、お母さんが言ってたことは本当だったんだ。
でも、私が知りたいのは……
「ひいお婆ちゃんはどうして人間として生きようとしたの?」
理由が知りたかった。
妖王のことを想っていたなら、そう簡単には妖王と離れられなかったはず。
現に私は悩んでいるんだから。
でもおじいちゃんは渋々、首を横に振った。
「…その理由までは教えてはくれなかった。
人間として生きて人間に恋をして、そして人間の儂が産まれたと言っておった」
肝心の理由はおじいちゃんにも聞かされていなかったらしい。
その証拠に、おじいちゃんは納得いかないような表情を浮かべている。
ひいお婆ちゃんは何を想って、人間として生きようとしたんだろう…
人間として生きることを選んで、ひいお婆ちゃんは愛する妖王のことを忘れることはできたの?
人間として生きて、ひいお婆ちゃんは幸せだったの?
聞きたいことは考えだしたらきりがない。
でもおじいちゃんは知らないから、解決することはできない。
せっかく紅葉の話を聞いて、モヤモヤが晴れたのに……
また振り出しに戻ったみたいに、頭の中がモヤモヤする。
まるで最後の決断は自分で決めなさい、とひいお婆ちゃんに言われているみたい。
実際、その通りなんだけど……



