「鵺姫を産んだ母親を舐めないでほしいわ。これでも少し力はあるのよ?
でも来海や大地、お父さんを騙せていたのは上出来ね」




私は騙されなかったけど。
お母さんは完璧という言葉が似合う笑顔を見せた。




お母さんは昔からすごいと思ってたけど、こんなにすごいと思ったのは初めて。




というか来海と大地とおじいちゃんは紅葉が化けた私に騙されてたんだ…




お手上げポーズをしていた三篠だけど、すぐにニヤリと笑った。




「確かにさすがと思ったが、一つ間違ってる。
俺は妖王じゃない。妖王となる者だ」


「…っ!妖王じゃ…ない……!?」




何故かここでお母さんは驚いてる。
私は理解出来ずにに首を傾げた。




「…鵺姫が妖王じゃない者を選ぶだなんて……そんなことって……」




お母さんがブツブツと独り言を言ってるけど、私の耳には入ってこない。




お母さんはしばらく考えてからいつもの優しい微笑みのない、真剣な表情を私達に向けた。




「このことはひとまず置いとくわ。
小雛、鵺姫となったあなたには見せておかなければならないものがあるの」


「私に…?」




自分を指差すと、お母さんはコクリと頷いた。
私、鵺姫に見せておかなければならないものってなんだろう…




いつものように首にかけていたお守りの違うやつかな?
とか考えていると、お母さんは本殿を出て行った。




「…ついて来なさい。
将来の妖王と、子狐ちゃんもね」