「……花奈……」


泣き濡れた顔でそれでも微笑む少女は、いつか文化祭で見た時よりも気高く、自信に満ちていた。


「・・・わたしも、わたしも貴女が好き。大好き。……なんて、今更言っても遅いんだけどね」


自嘲気味に言うとひとつ息を吐く希緒。


「……もう、行くわ。荷物とか部屋の片付けがあるから・・・」


「お見送り、絶対行きます」


その言葉に少女を見詰めると、花奈は今までに見せたどの瞳よりもいちばん綺麗な、意思のはっきりとした輝きを宿していた。


「来週の今日、14時30分ので行くから。……じゃあ、また来週ね」


「……はい、また来週」


ふたりはそのまま、まるでまた明日にでも会えるかのように軽く別れた。