二人で家を出て、歩くこと十五分。もう五月も半ばだったが、やっぱりここまでの早朝ともなると…寒い。
「ん?寒いのか?」
「うん…。」
私が言うと、菜月くんが手を握ってくれた。温かさが伝わる。
「…ありがと。」
言葉に出すのは、少し恥ずかしかった。でも言えたのは、菜月くんが…。
「あ、いたいた。」
暗かったが、私には容易に発見できた。
「すいません、待ちました?」
「まあな。ふあぁ…。」
大きなあくびが一つ。どうやらこの人も、朝が苦手な人らしい。
「あ、えっと…私の同僚の、新海菜月くんです。」
「恋人師の新海菜月です。」
菜月くんはペコっと頭を下げた。するともう一人の方も、同じように頭を下げた。
「はじめまして、東都大学教授の、武ヶ井理です。」