話を聞いて、納得するのに時間はかからなかった。
「そう、なんですか。……マスターは元気ですか?」
「ああ。君がいなくなって寂しそうではあるがな」
「……よかった」
懐かしい人の話をして、ほっとした。
その時、虫の羽音のようなものが聞こえた。
「すまない、電話だ」
天花寺さんはポケットから震えているケータイを出し、画面で相手を確認する。
問題ないようで、その場で出た。
「私だ。………」
私はここに居ていいのかな。
席を外そうかと逡巡していると。
ケータイを差し出された。
「噂のあの人だ」
いたずらっぽく相手を教えてくれる。
私はそれを受け取って、耳に当てた。
「もしもし……」
『ひさしぶりだな、元気にしてたか?』
「はいっ」
電話越しのマスターの声。
久しぶりすぎて、懐かしくて、目に汗が……。
話したいことがいっぱいあるの。
さらわれてから、祝前の家に行き、そこから草薙の家への大移動。
草薙家の愉快な使用人たちと、敵対する御曹司。
多少むちゃくちゃなこところあったけど、マスターは相槌をうって聞いてくれた。
話しやすくて、半分以上が御曹司に対する愚痴になった。
『そっか、大変だったな。でも、楽しそうで良かった。その御曹司くんが大好きなんだね』
「そんなわけないです。あいつはむかつくやつなんですよ!」
『ははっ、そうだったね』
「わかってないでしょー」
和やかに笑いあって話す。
毎日当たり前のように会っていたあのころからは想像もできないほどに、お互い口数が多かった。
『でもほんと、逃げたくなったらいつでも動いてね。すぐに駆けつけるから』
「私から連絡を取る手段なんてないですよ?」
『大丈夫。呼んでくれたらどこにだって飛んでいくよ』
軽口を叩き合う今が、すごく楽しい。
でも、そんな時間も永遠に続かないわけで。
「そう、なんですか。……マスターは元気ですか?」
「ああ。君がいなくなって寂しそうではあるがな」
「……よかった」
懐かしい人の話をして、ほっとした。
その時、虫の羽音のようなものが聞こえた。
「すまない、電話だ」
天花寺さんはポケットから震えているケータイを出し、画面で相手を確認する。
問題ないようで、その場で出た。
「私だ。………」
私はここに居ていいのかな。
席を外そうかと逡巡していると。
ケータイを差し出された。
「噂のあの人だ」
いたずらっぽく相手を教えてくれる。
私はそれを受け取って、耳に当てた。
「もしもし……」
『ひさしぶりだな、元気にしてたか?』
「はいっ」
電話越しのマスターの声。
久しぶりすぎて、懐かしくて、目に汗が……。
話したいことがいっぱいあるの。
さらわれてから、祝前の家に行き、そこから草薙の家への大移動。
草薙家の愉快な使用人たちと、敵対する御曹司。
多少むちゃくちゃなこところあったけど、マスターは相槌をうって聞いてくれた。
話しやすくて、半分以上が御曹司に対する愚痴になった。
『そっか、大変だったな。でも、楽しそうで良かった。その御曹司くんが大好きなんだね』
「そんなわけないです。あいつはむかつくやつなんですよ!」
『ははっ、そうだったね』
「わかってないでしょー」
和やかに笑いあって話す。
毎日当たり前のように会っていたあのころからは想像もできないほどに、お互い口数が多かった。
『でもほんと、逃げたくなったらいつでも動いてね。すぐに駆けつけるから』
「私から連絡を取る手段なんてないですよ?」
『大丈夫。呼んでくれたらどこにだって飛んでいくよ』
軽口を叩き合う今が、すごく楽しい。
でも、そんな時間も永遠に続かないわけで。


