「なんか心、最近元気ないね」

「えっ、そう?」

いきなりあたしの前に座る由希にそう言われ、あたしは一瞬声が裏返ってしまった。

「うん。何かあった?あたしで良ければ相談乗るけど」

「う、ううん。何もないよ、大丈夫」

作り笑いをしてそう返すあたしに由希は心配したような表情を向けて来たけれど、あたしは到底矢沢君との事を暴露するなんて出来なかった。


それからというもの、今日もあっという間に放課後を迎え帰る支度をする。教室を出ようと腰を上げると、不意にガラッと教室の扉が開いた。


「心ちゃん」

「…あ、」

扉の前に立っていたのは、絢さんの事を色々と教えてくれたあの蒼稀君だった。