その後、あたし達は繋がれた手を離さないまま電車に乗車して、他愛もない話をしながら帰路についた。
あたしは「山本駅までで良いよ」と言ったのに、隣に居る矢沢君は「駄目だ危ない」なんて言って来て、結局あたしの家の前まで送ってもらう事となった。
「ご、ごめんね。矢沢君、反対方向なのに」
「別に良い。お前に何かあるよりマシだ」
「え、大丈夫だよ。……あたしだし」
「何言ってんだ。今日のお前は……―――」
「え？」
「いや、何でもない」
不意にそう言い掛けた矢沢君は何故か途中でハッとして、あたしから視線を逸らした。
「変な矢沢君」
「うるさいな」
「じゃあ、送ってくれてありがとう。また休み明け学校でね」
「ああ」
あたしが笑顔でそう言うと、矢沢君もそっと小さな笑みを向けてくれた。
