あ、由利…。


あと少しで家につく、というところの公園に由利がいた。

まだ小さい子ども達が元気に駆け回っている中で、由利はベンチに座って真剣な表情で携帯を睨んでいた。

見たことのない表情。
私は声をかけるべきか悩んだ末に、どうしてもその表情が気になったので声をかけることにした。


「由利」


声をかけると、由利ははっとした様子で顔を上げた。
私を確認するといつもの笑顔になり、携帯をしまった。


「いすみじゃん。こんなとこでどうしたの?」

「お使いを頼まれたの」


言いながら買い物袋を見せる。


「由利こそ何やってたの?」


一瞬、由利の表情が曇った気がした。


「ちょっとした考え事かなー」


そう言って遠くの方を見る由利。
同じ方に目をやると丁度夕日が沈んでいくところだった。
辺りがオレンジ色に染まっていく。


「きれいだなー」


由利が呟く。
その表情はいつもの由利なのに、どこか寂しそうだった。


「あの、由利。
何か悩んでるなら相談してね。私じゃ役に立たないかもしれないけど、話を聞くことならできるよ」

「あはは、大丈夫だよ!
うん、でもありがとう。また何かあったら相談するね!
いすみも何かあったら私に相談してね」

「うん」

「よし!
あ、お使い頼まれてたんだよね?だったら早く帰らなきゃじゃん」

「あ、そうだった」

「じゃあまた明日ね!」

「うん、また明日」


由利が先に公園を出ていった。

大丈夫。
由利はそう言ったけどやっぱり気になる。
だけど大丈夫と言われたらそれ以上を聞く勇気が私にはない。


でもまぁ由利のことだからほんとに大丈夫なのかも知れないな。


そう思ってその日はそのまま帰った。