「中に入れば?」


演奏を止めた月島先輩に言われて、


「し……失礼します」


私は、おそるおそる音楽室へと入る。


「そんな隅っこじゃなくて、こっちに来れば?」


音楽室に一歩入っただけで止まっている私に月島先輩が声をかける。


「は……い」


さっきの事もあって緊張してしまう。


「あの……今の曲」


「今の曲?」


「凄く素敵で―…聞いた事があるんですけど曲名を思い出せなくて―…」


思い切って月島先輩に話しかけた私。


「雨だれ」


「雨だれ……」


「ショパンの雨だれ」


雨だれ、かぁ……今日の晴れた天気とは違うけど、綺麗な曲。