「それは大変助かりますが…、宜しいんですか?貴方のお帰りが遅くなってしまう…」

俺はそう低姿勢に男に話すが、それ以上に謙虚な言葉が返ってくる事は分かりきっていた。


「…いいえ!協会の方のお役にたてるなど、勿体無い程に光栄な事ですよ!」

予想通りの言葉。

それは本心か?
と問いただしたくなる。


この街の人間は、白い衣服を着る事を禁止されている。
それを許されるのは、
俺の様な「協会」の関係者のみ。

金の刺繍の入った、
フード付きの白いケープ。

暗い闇の季節ですら目に止まりやすいこの支給品が、俺は嫌いで堪らなかった。


「…そうですか。では、お言葉に甘えさせていただきます…」

まぁ、泳がずに済む。
もうしばらく、この偽りの姿を我慢すれば良いだけの事…。

そう自分に言い聞かせて、はっきりとは照らされない男の顔に微笑み掛けた。


協会の人間は、
清く正しく、公平に、品良く…

あぁ、
正直ヘドが出る。


しかし、住民の期待と信頼を裏切る事は出来ない。
夢を、壊してはならない。

それは常々、
協会のじじぃ共に言われ続けて育った内容だ。